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相続したら所得税を取られる?

不動産コンサルティング

以前、お客様に聞かれたことがあります。


「相続して財産を取得したら、所得税も取られるんですよね?」

この疑問は理解できます。相続して高価な不動産を受け取ると

何となく"儲けた"感じがしますよね。

儲けたら税金が発生する。こんなイメージがあります。


所得税の基本のキのようなお話ですが、
所得税法では

包括的所得概念


という考え方があります。


我々が思っているよりも、さらに"所得"は広い概念です。
包括的所得概念では、

ほとんどすべての「もうけのようなもの」が所得に該当します。

包括的な所得の考え方ですから、
広い意味での資産増加を"所得"と見なします。


所得=一定期間の純資産の増加


という考え方をするのです。
資産が増えれば、とりあえず何でもかんでも所得、ということです。


この考え方を厳密に適用すると、
土地が値上がりしたら、毎年、所得税を取られます。

毎年毎年、不動産評価差益を計上して、所得税を納めることになります。

不動産の時価なんて、厳密には毎年変わるものでしょうから、

理論上、全ての不動産の値上がりが所得税の対象となります。


これは流石に現実的ではありません。
値上がりしたところで、利益を確定させるために売却しなければ、
税金を支払う能力(担税力)がありません。


ですから不動産等の値上がりについては、
その利益が確定した時に課税する、ということにしてあります。
要するに、売った時に課税するわけです。清算課税といいます。



さて、話を戻して相続のお話をします。

親(被相続人)から子(相続人)へ資産が承継される。
これも、相続人にとっては「純資産の増加」ですから所得です。


包括的所得概念の上では、確かに所得なので、

冒頭の質問は正しいのです。確かに所得税を納めてよさそうな場面です。


しかし現実的に、

~~家全体として財産が増えたわけではありませんし、
新たな価値が生み出されたわけでもありません。

相続とは世界全体の既に存在する財産を、引き継ぐだけの手続きです。

相続税ならまだしも、所得税を課税するべきではないと考えられます。


そこで、「所得なんだけれど課税しないよ」

と定めているのが所得税法第9条です。


(非課税所得)
第九条 次に掲げる所得については、所得税を課さない。

一 当座預金の利子~~中略~~
二 ~~中略~~
三 恩給、年金その他これらに準ずる給付で次に掲げるもの
イ ~~中略~~
ロ 遺族の受ける恩給及び年金~~中略~~
ハ ~~中略~~
四 ~~中略~~
五 給与所得を有する者で~~中略~~一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分~~中略~~
六 ~~中略~~
七 ~~中略~~
八 ~~中略~~
九 自己又はその配偶者その他の親族が生活の用に供する家具、じゆう器、衣服その他の資産で政令で定めるものの譲渡による所得
十 資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合における国税通則法第二条第十号(定義)に規定する強制換価手続による資産の譲渡による所得~~中略~~
十一 ~~中略~~
十二 皇室経済法(昭和二十二年法律第四号)第四条第一項(内廷費)及び第六条第一項(皇族費)の規定により受ける給付
十三 次に掲げる年金又は金品
イ 文化功労者年金法(昭和二十六年法律第百二十五号)第三条第一項(年金)の規定による年金
ロ 日本学士院から恩賜賞又は日本学士院賞として交付される金品
ハ 日本芸術院から恩賜賞又は日本芸術院賞として交付される金品
ニ ~~中略~~
ホ ノーベル基金からノーベル賞として交付される金品
ヘ ~~中略~~
十四 オリンピック競技大会又はパラリンピック競技大会において特に優秀な成績を収めた者を表彰するものとして~~中略~~交付される金品で財務大臣が指定するもの
十五 学資に充てるため給付される金品~~中略~~
イ ~~中略~~
ロ ~~中略~~
ハ ~~中略~~
ニ ~~中略~~
十六 ~~中略~~
十七 相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの(相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)の規定により相続、遺贈又は個人からの贈与により取得したものとみなされるものを含む。)
十八 ~~中略~~
十九 ~~中略~~
2 ~~中略~~
一 ~~中略~~
二 ~~中略~~


太字部分、「相続、遺贈により取得する者は非課税」と定められています。

所得なんだけど、非課税規定があるから課税されない、というわけです。


それ以外でも、有名なところでは

ノーベル賞を受賞された賞金には所得税が課税されません。
一方、ノーベル経済学賞はノーベル基金が主催していないため

賞金に所得税がかかるとか。オリンピックの受賞金も非課税だそう。

けっきょく税金の有り方を決めるのは政治なのでして、

政治的に所得税を支払わなくていい、

とされたことは非課税になっているわけです。


ともかく結論、相続に所得税はかかりません。
相続税を支払って所得税も支払うのは二重課税ですね。



一方、相続した不動産を、相続した後に売却すると、

これには所得税が課されます。

相続したあとは、あくまで本人の財産ですから、売却する時は、
「値上がり益の清算課税」ということで、所得扱いになります。



所得税は、想像しないところで発生します。
たとえば不動産を贈与したら、
贈与を受け取った人には贈与税が課される一方、
贈与者にも譲渡所得税が課される場合があります。


「すべての純資産増加に対して、

その資産が移転した時(=清算した時)に課税する」


という理屈です。贈与した人にとって、

その贈与が得したように見えるなら、

ケースによっては所得扱いされてしまうわけです。


※具体的に、負担付贈与(借金付き不動産の贈与など)の場合です



これが現金だと、贈与した側への課税は通常ありません。
現金を移転しても「値上がり益」がありませんので、

清算課税が発生しない=贈与した側に所得が無い

という理屈になります。


税制が一般的な感覚と乖離しているシーンでは、
予期せず課税が発生することがあります。

子世代へ資産を生前贈与する場合など、ご注意ください。

「いいよいいよバレないから贈与しちゃうよ」

という高齢者も多いのですが、

結局、子世代の相続税申告時に発覚することが多いです。

お気をつけください。


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