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土地の坪単価は参考にならない

後悔しない土地売買の方法


以前、土地のご所有者と
売却の打ち合わせをしていたときに
こんなことを言われました。

「近くの土地を売った人から聞いたら
坪10万円と言っていた。それと比べて、
うちの土地が坪単価8万円になるの、おかしくない?」


※ちなみに1坪=約3.3㎡です



不動産売買の現場で多用される「坪いくら」という話。


住宅建築の現場でも

「坪単価45万円で家を建てられるから安い」


等と聞きますが、住宅建築は、
設備のグレードや外構が絡みますのでややこしいです。

それに比べて、土地は平面だけの話ですから、
坪単価という指標はわかりやすく感じるようです。



冒頭のやりとりに戻ります。
「おかしくないですか?」
と言われましたが、べつにおかしくないのです。

むしろ、なるべく高くしよう、と思って
色々頑張ったので、少し切なかったです。



土地は平面だけの話だから、
近隣の土地なら同じ単価でないとおかしい、
と思われがちですが、そんなわけはありません。



土地に同じものは何一つなく、
すべて違うのです。



土地価格の変動要素を、
同一地域で比較する場合、
大きく分けて2つの要素が考えられます。


①個別要因
土地の形状
・接道状況
・排水先の有無
・上水道管の敷設状況
・下水道管の敷設状況
・法令制限(何が建築できるか、または建築自体可能か)
・阻害要因(越境・トラブル・連合管・埋設物・土壌汚染)
etc…



こういうのは、まだわかりやすいですね。

土地形状が悪ければ価値が下がりますし、
前面道路に上水道管が無ければ、遠くから引込工事する費用がかかる。
道路に対して土地が低くなっていれば土盛り・土留め工事が必要です。
それぞれ価格低下要素になります。


一般的に、土地の所有者は
「この土地を利用できるようにするのに
どれだけ費用がかかるか」

ということを無視しがちです。

特に、農地などの造成されていない土地は
宅地化するのにお金がかかります。

その分、売却する金額が"相場の坪単価"より下がるのは
当たり前、といえば当たり前の話です。


②面積要因
・標準宅地に対して狭ければ坪単価は高くなる
・標準宅地に対して広ければ坪単価は低くなる



これは意外と、皆様知らないようです。


標準宅地、というのは
「地域ごとに設定した主要な街路に接する標準的な宅地」
という意味。不動産鑑定の用語ですね。
もう少しかみ砕くと、
「一般的に取引される、普通の条件で普通の広さの土地」のことです。



東松山市の場合、一般的に取引される住宅地の広さは
45~50坪(150㎡~180㎡)くらいでしょうか。
これくらいが「ふつうの広さ」という感じ。



駅徒歩20分くらいの市街化区域の土地で、
坪25万円くらいが適性だとすれば、
45~50坪くらいの標準宅地
1100~1250万円位になります。
まぁまぁ合ってるかな、とも思います。



これに対して、同じような土地が35坪と小さかった場合、
これは坪25万円にはなりません。
なんと坪30万円くらいになります。



需要に対して少し小さめな土地ですが、
「小ぶりな土地でいいんです」という人がいれば、
総額875万円の土地は割安に感じるのです。



一方、同じ場所に大きい75坪の土地があったとします。
坪25万円をかけると、1875万円。


土地に1875万円かけて東松山に家を建てる人、
どれくらいいますか?


けっこう少なくなりますね。



75坪で1宅地だと、
実際に決まるのは1500万円くらいでしょうか。
残念ながら坪20万円になってしまいました。


これが面積要因です。



「狭いと坪単価は高くなり、
広ければ広いほど坪単価は薄まる」


と覚えてください。



結局、大切なのは「価格」。
買う人が土地購入を検討する時、
「総額いくらで買えるか」という話です。


あなたが家を買う時

「坪単価20万円だから買えるぞ」

とは思わないでしょう。


「土地が1200万円、建物+外構が2200万円、
諸費用で300万円かかって総額3700万円、
貯金が4000万円あるからなんとか買えるぞ」


と思って買うわけです。

※すごい貯金額ですが



土地が小さければ、そのぶん総額も安くて済みます。

「坪単価が30万円だけど、土地の総額は875万円だし、
家も少し小さくていいから総額3200万円で済む。
35年ローンを組んで毎月9万円。なんとか買えそうだ」


というのが現実の思考です。


ちなみに、土地面積が大きくなればなるほど
坪単価は反比例して下がっていきます。


平均的な住宅地があったとして、
周辺の坪単価が20万円だったとします。
土地の大きさが500㎡だと坪単価は15万円位になります。
1,000㎡以上あると、坪12~13万円でしょうか。

広い土地を活かすには工事費用が嵩んでしまうし、
総額が大きいほど買える人は少なくなるため、
結果として坪単価は下がってしまいます。



一方、"大き過ぎる"場合
土地面積が10,000㎡とか、20,000㎡以上の場合、
稀に物流用地や工場用地として価値が出ることもあります。
利用価値が高くなれば、そのぶん坪単価も高くなります。


「大きいから価値がある」場合もあるわけですね。
だいたい6000坪以上で、
県道・国道に接道していれば
物流用地として価値が出てきたりします。
とはいえ、倉庫や工場を建てられる土地でなければ、
あまり意味がありません。


では"小さすぎる"場合はどうでしょうか。

東松山の場合、どんなに小さくても
建築する土地面積は30坪くらいまでです。

都内だと16坪くらいの土地に
無理やり3階建住宅が建ちますが、
東松山では、これくらいの狭い土地だと
市場価値が成立しません。


せいぜい近隣の方が
駐車場用地として買ってくれるくらいで、
そもそも坪いくらだとかいう話ではなくなります。
50万でも何でも、買ってくれればいいですね、
ということです。



以上のようなわけで、
とにかく坪単価なんていうのは、
あくまで指標の一つに過ぎません。
しかも、かなりあやふやな指標です。

坪単価で語れないことが多すぎるから、
世の中には「不動産価格査定」というものがあって、
不動産業者がいちいち現場を見て、役所を一通り調べて、
所有者から話を聞いて、場合によっては近隣住民にもヒアリングして、
過去の成約事例を調べて、あるいは地元業者にも聞き込みしたりして、
やっとこさ

「そこそこ確実な金額はこれくらいかなぁ」

と思って価格を提示しているわけです。



全国どこの土地も、バブル期を経ています。

関東圏の土地は、平成5年の土地価格から
30年を経過して現在、
当時と比べて4分の1~5分の1の価格まで低下しました。

「先週、坪40万円で買った隣の土地が
 今週坪60万円で売れた」


なんて話が本当にあったのがバブルの時代。
どんぶり勘定で良かった時代、ともいえます。



現代では、土地価格の変動は抑制されており、
価格は各方面から調査・吟味されたうえで
決定されています。買主もシビアです。


情報は拡散されており、
「近隣ではいくら」「隣の市町村ではいくら」
「ここ数年の価格変動はいくら」

ネットで検索すれば、情報はいくらでも拾えます。


買う前の見積りも精密化されており、


登記費用造成費外構費設備費工事費諸費用etc…


全ての価格について、
買主はその内実を精査するようになりました。

その中で「坪単価」というのは、
あくまで参考情報のひとつに過ぎないのです。


最初の雑談程度ならわかりやすくていいのですが、
意思決定や交渉の現場で坪単価を持ち出すと、
現実からかけ離れた話になりがちです。


現実に反した情報をもとに意思決定をすれば
判断を誤ります。合理的な判断ではありません。


とはいえ感情的な判断で「売らない」選択をしたところで、
売主サイドの腹は痛みません。
売りたくなければ売らなきゃいいのです。
長期的には機会損失なのでしょうが、
そもそも人間は合理的な生物ではありません。


冒頭の話。
かなり良い条件をお持ちしたのですが、
あまり売主の印象は良くなかったようです。
私や関係者の方々は良い話だと思ったわけですが、
バブル期を経験している世代からすると、
どうにも安い・おかしい・騙されている、と感じる様子。


相場が云々、価格決定が云々、買主の費用が云々、というよりも
「近所の単価より安い!おかしい!」
という感情が勝ってしまいます。



都内でも埼玉近郊でも、
同じような光景は幾度も経験してきました。
感情の問題なので致し方ありません。


ほとんどの場合、
土地は次世代で、すぐ売却されてしまいます。

得てして、こういったケースは
農家出身の地主が土地所有者。
その息子のサラリーマンが相談者、というパターンが多いです。


お父様からすれば「農家にとって土地は宝物」
いっぽうサラリーマンをやっている
息子世代からすれば「土地が多くて困る」というわけです。
高齢な父に代わって、息子世代が草刈りをやっているが、
孫世代もサラリーマンで、地元に居ないことが多い。

将来、土地を管理する人間がいなくなるのは決定しています。


農家出身の父にとっては「土地が資本」でした。
そもそも「売る」という発想が無い。
感情の面からすれば、
息子から売るという話が出るだけで不満なのです。


さらに、バブル期の話と比べてあまりに安すぎる土地。
果たして、30年前に1億円といわれた土地を、
2000万円で手放す勇気があるでしょうか。



結局、今回は破談となり、ご子息は引き続き、
土日に草刈りを続けることになりました。
いったん「次世代まで保留」という結論です。


今回の物件は市街化調整区域の土地で、
将来、価格が下がる未来しか見えません。
今回のような話は、十年後にはできないでしょう。
私や子世代からすれば、明らかに良い話だったのです。
どう考えても「儲かる話」でした。
しかし親世代にとっては「大損」なのです。


"儲かるのに損した気になる"というのも
不思議な話ですが、人間ってそんなもんだよな、と思ったのでした。


※しかしバブル期より価格が下がったのを私に怒るのはやめて頂きたい

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