「34条11号区域」についての画像

「34条11号区域」について

後悔しない土地売買の方法

※令和5年4月1日より東松山市の制度見直しにより、
34条11号区域の指定は大幅に縮小されました。
以下は従前の内容が含まれており、現在とは一致しません。
資料として引き続き掲載しておきますが、

ご所有地の方針決定にはご参考になさらないようご注意ください。※




東松山市の土地は、都市計画法および条例上、大きく分けて3つの区域があります。
「市街化区域」という、住宅や建物を建てて欲しい中心街、

「市街化調整区域」という原則的に建物が建てられない郊外部分、


そして、そのふたつの境目に存在する

「都市計画法第34条11号区域」です。



駅から徒歩20分~30分くらい離れた地域にあって、

比較的安く土地が買えて、誰でも住宅が建築できる。


比較的安価で住宅をつくりたいお客様にとって

選択肢に入ってくる、そんな11号区域ですが、

実は現在、この11号区域が縮小・廃止されるという話が出ております。


今回はそんな、34条11号区域の解説をします。



まずは根拠条文から。

都市計画法の第34条11号にはこのように記されています。


第三十四条 ~~略~~、市街化調整区域に係る開発行為~~略~~については、当該申請に係る開発行為及びその申請の手続が同条に定める要件に該当するほか、当該申請に係る開発行為が次の各号のいずれかに該当すると認める場合でなければ、都道府県知事は、開発許可をしてはならない。


~~略~~


十一 市街化区域に隣接し、又は近接し、かつ、自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域であつておおむね五十以上の建築物(市街化区域内に存するものを含む。)が連たんしている地域のうち、政令で定める基準に従い、都道府県(指定都市等又は事務処理市町村の区域内にあつては、当該指定都市等又は事務処理市町村。以下この号及び次号において同じ。)の条例で指定する土地の区域内において行う開発行為で、予定建築物等の用途が、開発区域及びその周辺の地域における環境の保全上支障があると認められる用途として都道府県の条例で定めるものに該当しないもの


つまり、34条11号区域とは市街化調整区域の中でも、


「市街化区域と一体的に生活圏ができている

50戸以上の建築物が連たんしている地域」


として、条例で指定された区域内、のことを指します。

「練たん」とは「つながっている」という意味です。



さて、「条例で指定する土地の区域内」ですが、

”東松山市都市計画法に基づく開発許可等の基準に関する条例”に記載があります。


第2条 法第34条第11号の規定により指定する土地の区域は、次に掲げる基準に基づき、市長が指定する土地の区域とする。

(1) 区域内の建築物の敷地がおおむね50メートル以内の間隔で存していること。ただし、区域及びその周辺の地域における自然的条件、建築物の建築その他の土地利用の状況等を勘案し、集落の一体性を確保するために特に必要と認められるときは、この限りでない。

(2) 区域内の主要な道路が、環境の保全上、災害の防止上、通行の安全上又は事業活動の効率上支障がないような規模及び構造で適当に配置されており、かつ、区域外の相当規模の道路と接続していること

(3) 区域内の排水路その他の排水施設が、その区域内の下水を有効に排出するとともに、その排出によって区域及びその周辺の地域に溢水等による被害が生じないような構造及び能力で適当に配置されていること

(4) 区域の境界は、原則として、道路その他の施設、河川、がけその他の地形、地物等土地の範囲を明示するのに適当なものにより定めることとし、これにより難い場合には、町界、字界等によること。

2 市長は、前項の規定により土地の区域を指定したときは、遅滞なく、その旨を告示しなければならない。


34条11号区域は東松山市の条例により指定されていますが、

インターネットでは調べられませんので、

東松山市役所の都市計画課などに、ひとつひとつ確認する作業が必要です。



34条11号区域内で建築できる建物の種類についても、記載があります。


第3条 法第34条第11号の規定により定める開発区域及びその周辺の地域における環境の保全上支障があると認められる予定建築物等の用途は、建築基準法(昭和25年法律第201号)別表第2(ろ)項に掲げる建築物(高さが10メートルを超えるものを除く。)以外の建築物とする。ただし、開発区域及びその周辺の地域における環境の保全上支障がないと認められる場合で、市長が別に指定したときは、この限りでない。
~~略~~


ややこしい言い回しですが、

要するに建築基準法に記載された以下の建物を建築できる、ということです。



つまり、住宅や共同住宅、

あるいは店舗なども150㎡以内であれば建築可能です。



前回解説しました「都市計画法第34条12号」は、

住宅しか建築できない上、建築主の制限が強く、

郊外に血縁がある方でないと許可が降りませんでした。


一方、この34条11号区域には、建築主の制限がありません。

そのため現実的には、


11号区域=誰でも建築可能です 


という表記になっていることが多いです。



駅近くは土地が高いし、売り土地が少ない。

一方、駅から少し離れた場所なら、土地が比較的安価で購入できる。

誰でも住宅が建てられれば、人口が増えて市の財政にも寄与できる。


そもそも平成12年に既存宅地制度が廃止され、

市街化調整区域の救済措置みたいなものとして

作られたのが旧"34条8の3区域"であり、現在の34条11号区域です。

まだまだ人口減少社会を想定した法整備はされていませんでした。


34条11号区域は東松山市以外でも指定されていて、

建築要件は異なりますが、熊谷市や坂戸市、

入間市や狭山市などでも指定されています。



さて、そんな34条11号区域ですが、

人口減少・空家増加・"負"動産社会の昨今、

その社会的役割を果たした、ということで、

区域指定の廃止が進んでおります。


川越市では平成23年に廃止、羽生市でも平成31年に廃止となりました。

その他の各市でも順次、廃止になったり縮小している状況です。


東松山でも同様の動きがあります。

東松山市都市計画審議会では、

現在でも34条11号指定区域の縮小について議論を続けています。

令和2年11月の議会では、

おおよその対象区域および縮小へ向けたスケジュールが示されました。




上図の黄色部分が廃止される地域です。

大字松山、柏崎、宮鼻、石橋、上唐子、

下野本、上野本、松山町2丁目などのうち

一部分が対象となります。


実際は、この黄色部分の中でも

「県道・国道に接道している土地」

「幅員8m以上の市道(通り抜けまで幅員8mを維持しているもの)に接道している土地」

に限られるので、ひとつひとつ調査が必要です。


また、赤色部分については、

11号縮小後も専用住宅の新築が可能、とされています。

この地域は線引前に開発された住宅団地で、

住宅建築の為に大規模開発された地域です。

中山団地、月中団地、白坂団地、東武台団地、星城団地、西原団地など。

そもそも住宅建築のために開発した場所を

建築不可とするのは既存権の侵害だ、と考えたのかもしれません。


11号区域の縮小は令和5年4月から施行開始する意向です。

周知期間を2年設ける、というのは他市町村に比べて親切ではあります。



さて、法律的な趣旨から考えますと、

「市街化調整区域」=「建築不可」ですので、

そんな中で「34条11号=誰でも建築可」としていたのは、

あくまで例外的な措置です。


東松山市はコンパクト・シティ化を目指しており、

人口減少の昨今、市街地の空洞化を防ぐため、

市全域にまばらに人が住むことを抑制したいと考えています。


しかし一方、11号土地の所有者にとっては、

今まで誰でも住宅が建てられた土地が、

令和5年4月を境に、非常に建築しづらい土地へと変わってしまいます。


当然、市場価格も低下しますので、地主の方からすれば、

市の施策によって所有資産の価値下落が起こることになります。


また、滑川町など11号区域が残っている他市町村では、

変わらず安価で広い土地が購入できるわけですから、

転入希望者が滑川町など他市町村へ取られてしまうのではないか、

という懸念もあります。



現在でも、都市計画審議会では議論が行われており、

地元不動産会社や地主の方々の中では、

市に説明と議論を求める声が挙がっています。


未だ不透明な状況ではありますが、

11号購入希望者の方は早めの土地選定と建築をお薦めしますし、

11号土地所有者の方は、現在建てられるものが

将来建てられなくなる可能性を見越して、

土地の将来計画などを考えておく必要があります。


また、かつて11号土地を購入したものの、

現在も更地のまま建築していない方をたまに見受けます。

そういった場合、令和5年以降は建築制限が付く可能性があり、

将来的に売却価格が下がる恐れがあります。

その他、相続の局面を考えると、

調整区域の建築制限がついた土地は、

相続人の中で押し付け合いになる可能性もあります。


一族全体の、不動産を含めた資産の承継方法について、

早めに話し合っておくことが大切です。



※※その後・・・※※


令和5年4月から実際に11号は大幅縮小されました。

昔からの住宅団地以外は全て廃止、というわけです。


現実に起こったのは「制度改正前の追込み申請」です。

令和5年4月に間に合うよう、特に多くの農家地主が、

農地を処分すべく、分譲業者に譲渡しました。

ちょうど上り地域の地価高騰の煽りを受け、

分譲業者が「東松山でもいいから土地が欲しい」と思っているところ、

大量供給された農地は、大手建売会社も地元分譲会社も、

こぞって購入していき、開発行為を行いました。


令和6年の現在も土地造成をしている現場がありますが、

結果、「建売住宅の供給過多による価格下落」が顕著にみられます。

2年前、2500~3000万円程度だった建売分譲住宅は最安1880万円となり、

建売住宅の価格低下は、中古市場の価格低下も招いています。

またリフォーム再販住宅も値下がりしていて、

東松山市だけはなく比企地方全般に、マイナスの影響をもたらしています。



制度を変えれば歪みは出ますので仕方ないのですが、

全国的に建築単価が高騰している昨今、東松山市限定で市場が下落しているのは、

ちょっと珍しい現象のように思います。


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