お願いだから解体前に相談してください
東松山市という地域柄、郊外の土地の売却相談をよく頂きます。
東松山市のほぼ8割以上の土地が市街化調整区域です。
市街化調整区域は原則的に建築不可です。
駅近辺や殿山町・沢口町などは市街化区域です。
市街化区域は誰でも建築可能です。
この市街化調整区域と市街化区域を区域分けしたのが昭和45年頃。
"区域区分"といいます。
区域区分制度は、無秩序な市街化の防止と計画的な市街化を図ることを目的として、昭和43年の都市計画法制定により創設されました。昭和30年代からの高度経済成長に伴って人口が都市に集中し、都市が無秩序に拡大するいわゆるスプロール現象が社会問題としてクローズアップされたことを背景に導入された制度です。
//www.pref.saitama.lg.jp/a1102/sigaika-chousei/index.html
市街化調整区域は建築不可ですから、
誰でも建てられる市街化区域よりも価値は下がるのは当然です。
住宅適地であっても、感覚的には30~50%くらい変わります。
都会から田舎暮らしに憧れた人が比企地方の土地を探そうとしても、
こちらの地方に親戚が居ないと、調整区域では建築できません。
※親戚がいるから建てられるとも限りませんが
ともかく、"誰でも建てられる" というのは、それだけの価値があるわけです。
市街化調整区域の建築に関して、
東松山市・住宅建築課のウェブサイトにこのような記述があります。
既存の建築物の建て替え
区域区分日前からある建築物、区域区分日後に適法に建築された建築物又は従前許可不要建築物の用途の変更を伴わない建て替え行為は可能です。
ただし、この場合でも、その建築行為が都市計画法に適合している旨を証明する適合証明の交付を受け建築確認申請書に添付する必要があります。
http://www.city.higashimatsuyama.lg.jp/soshiki/toshikeikakubu/jyutaku/menu/kaihakyokaseido/1349856392040.html
以前に解説しましたが、"築20年経過の既存建物の建て替え"というものです。
多少手続きが要りますが、これは"誰でも建てられる"話になります。
ようするに、昔から建っている建物を建て替えるのは誰でもできるわけです。
ここで大切なのは"既存の建築物の建て替え"ということ。
建物が現存することが前提となります。
「この建物を建て替えるから許可を下さい」という申請になります。
※用途変更を申請して属人性を抜き、その後適合証明を取得する流れ
建物があることが大前提ですから、
"古い建物だからとりあえず解体しよう"
と思って解体してしまうと
"誰でも建てられる土地"では無くなる可能性があります。
この"既存の建築物の建て替え"ですが、
市町村により取り扱いが異なります。
火災による滅失なら罹災証明書を出せばOKをもらえる場合、
解体してから1年以内なら許される場合もあります。
どんな理由でも解体したらダメ、という市町村もあります。
また、【既存の建物と同一規模・同一用途のものは建て替え可能】
とされることが多いですが、"適法に建築されていること"が前提です。
つまり、違法建築した建物だと再建築できない可能性が高いです。
尚、従前の建物が倉庫や工場だった場合、
上手くすれば同一規模・同一用途での再建築が可能となり、
事業用地となる可能性が出てきます。
この場合、上手くハマれば住宅地より価値が高くなることもあります。
しかし解体してしまえば、それも無くなってしまいます。
市街化調整区域の再建築については、各自治体によって考え方が変わりますし、
物件ごとに状況が異なりますから、一つ一つきちんと調査する必要があります。
ヒアリングだけでは判断できないことが多いです。
昔から居住している売主は、
なんとなく周囲から、この辺りのことを聞いているものです。
しかし、相続して調整区域の認識が薄い相続人が所有者になると、
周囲から勧められてとりあえず解体してしまうことがあります。
確かに空家問題は有名になっているし、
古い建物は景観を悪くする、ということもあります。
崩れかけの建物なら解体せざるを得ないかもしれません。
ただ実態は、葬儀屋から解体業者を紹介されたり、
共有相続した時に"とりあえず解体しておこう"
という話になっていることがほとんどです。
もう一つ。これは田舎特有の事情ですが、
"建物があれば売れるが、建物が無い更地になると需要が無い"
というところも多いのです。
これは市街化調整区域だけの話ではありません。
たとえば土地面積が80㎡~100㎡くらいしかない場合。
突っ込み道路の一番奥だとか、少し駅から離れた旗竿地など。
こういった土地は、今どきのニーズからは離れているため、
売れづらいことがあります。
しかし、この土地に使えるレベルの建物があった場合は、
なんとか売ることができます。
建物をフルリフォームして居住する購入者や、
あるいは最低限リフォームして貸家にしたい購入者が想定されるからです。
特に狭小の土地は、建て替えニーズが非常に少ないです。
昭和50年築でもいいから建物があれば処分できることがあります。
整形地でも、築35年くらいまでの建物なら、
更地で売るよりも高くなるかもしれません。
それ以上経っていても、リノベーション用の建物として使えるかもしれません。
築22年を経過したから
耐用年数を超えていて価値がゼロ、なんていうのは嘘です。
以上のように、建物の有無は土地の価値に大きな影響を及ぼします。
理由があっても無くても、とにかく解体する前に一度相談して頂きたいです。
解体費が先行で発生するのに、
解体のせいで発生する逸失利益が大きい恐れがあります。
だいたいの場合、解体してしまった後で売却相談されます。
終わってしまった話なのでいちいち指摘しませんが、
なんかもうすごくがっかりします。
特に市街化調整区域の場合、
"手放せるか手放せないか"を左右することすらありますので、
どうか、記憶に留めて頂ければと思います。
※※余談・・・※※
極端ですが、事故物件の事例。
【自殺してしまった建物付きの土地建物】と
【自殺してしまった建物を解体した更地】の比較。
告知事項有りを前提としますが、
これでも解体せず、建物付きで売却する方がよいケースが多いです。
心情整理のため解体したいなら止めませんが、
経済合理的な側面では、やはり事前にご相談してほしいですね。