路線価って何?
今回は路線価と取引価格、相続税評価について。
以前、東松山駅近くの土地を取引したときのこと。
販売価格は50坪で1,800万円位だったと思います。
看板を立てて、すぐに近所の方が買いたい、といらっしゃいました。
そのとき、買主の方がおっしゃったのが
「この土地は”路線価”から計算すると1,300万円くらいが妥当だから、
それくらいにしてくれませんか」ということ。
なるほど確かに、
路線価から計算すると1,100万円くらいの土地で、
100%評価に直して1,300万円くらいが適性といえるかもしれません。
しかしその土地は実際、1,800万円で売れる土地でしたので売主も譲らず、
結局申し訳ないとも思いつつ、1,800万円で購入して頂きました。
そもそも「路線価」とは何でしょうか。
弊社・松堀不動産コンサルティングの敷地を例にして考えてみましょう。
こちらは全国地価マップより抜粋ですが、
評価単位となる土地ごとに接する路線価、
つまり左側の「79D」が路線価となります。
この路線価は「相続税路線価」といって、国税庁が算出した金額です。
Dは借地権割合といって、
借地・底地・アパート評価の場合などで使われますがいったん置いておきます。
「79」は平米あたり1,000円単位の表記で、79,000円/㎡ のこと。
弊社が入っているMプラザビル3、
というのは1,100㎡くらいの敷地ですから、弊社敷地の相続税評価額は
路線価×地積=相続税評価額
79,000円/㎡×1,100㎡ = 86,900,000円
となります。
実際は、各種補正が入り、
さらに規模格差補正率なども適用できると思われますので、
自用地の場合、ざっと6,500~7,000万円くらいの相続税評価額でしょうか。
一方、路線価は「相続税路線価」だけではありません。
先ほどとは、金額が違っていますね。
こちらは「固定資産税路線価」といって、
市町村が固定資産税を課税するのに算定基準として使う価格です。
計算方法はやや複雑ですが、
簡便には 路線価×地積 =評価額 という計算方式なので、
67,200円/㎡×1,100㎡=73,920,000円
となります。
固定資産税評価の場合、規模格差補正率に準ずるような、
大規模土地の評価額を下げる補正率を入れない市町村が多く、
東松山市もそれに準ずる模様です。
ざっと感覚的には、6,000万円位前後の固定資産税評価額でしょう。
その他の有名な土地価格の指標として、
「地価公示価格」があります。
上図は東松山駅西口。松堀不動産の西口本店は、
ちょうど地価公示の基準地となっています。
ちなみに令和5年の価格は118,000円/㎡です。
この3つの価格は、それぞれ役割が違います。
〇相続税路線価 ⇒ 相続税(贈与税)を計算する基準となる数値
〇固定資産税路線価 ⇒ 固定資産税を計算する基準となる数値
〇地価公示価格 ⇒ 不動産取引価格(時価)の指標となる価格
一般的に言われる「路線価」というのは「相続税路線価」のことです。
尚、郊外に行くと路線価が付されていない地域も多いです。
その場合は、倍率表と固定資産税評価証明をもとに相続税評価額を算出します。
さて、相続税路線価は、公示地価の80%を目安に設定されています。
固定資産税路線価は、公示地価の70%を目安に設定されています。
地価公示価格は、1地点につき
2人以上の不動産鑑定士が行った鑑定評価をもとに
国が設定しているものです。
地価公示価格は、不動産取引の指標となるもので、
この価格をもとに相続税評価・固定資産税評価が設定されています。
地価公示価格は「不動産取引価格の指標」とされています。
しかし、実際の不動産取引が、
地価公示価格に沿った価格で行われる必要はありません。
あくまで需要と供給の折り合う金額・条件で行われるものです。
従って、不動産取引価格が地価公示価格と異なることも多くあります。
たとえば駅から近い人気の土地。
地価公示価格の1.3倍くらいで売買されることが、よくあります。
駅に近ければ近いほど、希少性が増しますから、
その分、供給に対して需要が過剰になり取引価格が高騰するわけです。
一方、駅から離れた郊外の土地は、
公示価格の0.5~0.8倍くらいになることもあります。
需要に対して供給が多すぎるか、需要自体が少ないせいです。
また、大規模な土地は、
大きければ大きいほど、平米あたりの単価は下がるのが一般的です。
住宅用地としては、
その地域の平均的な住宅敷地面積くらい(東松山では150~200㎡くらい)が
一番需要が多いため、平米単価の基準になりやすいです。
東松山市では見られないかもしれませんが、
駅近くの商業地域では、ひとつひとつの土地は小さくとも、
それらをまとめて100坪~500坪くらいにすれば、
ビル・マンション用地として売却単価がぐっと上がることもあります。
この場合は「どれくらい大きな建物を建てられるか」が評価基準となります。
"一種単価"と呼ばれますが、容積率(建てられるボリューム)が
大きいほど、取引価格が高くなるわけです。
また、工場用地など事業用地は大きくても、
それなりの単価で取引されます。この場合、その建物を使って
上げられる収益から逆算して価格が決定します。
同じ大きさの建物でも、
東松山駅前にオフィスビルを建てても大して儲かりません。
一方、新宿駅前に同じビルを建てれば、テナント賃料は莫大です。
その差は、モロに土地価格へと反映されるわけです。
ともあれ、土地は日本全国すべて、姿かたちが違うものです。
上記のような机上の数字だけで決まるものでもありません。
上水道は?下水道は?排水は?埋設管は?ガラは?越境は?トラブルは?隣地の人柄は?過去の事件は?騒音は?火災は?浸水は?ハザードマップは?周辺の販売状況は?現在の競合物件は?
・・・等々、あらゆる要素を加味して、取引価格が決まります。
昔から相続されてきた土地、郊外の大きめな土地などは、
きちんと調べてみると水道管が他人の敷地をまたがっていたり、
排水が上手に取れなかったりと、問題を抱えているところがあります。
これを綺麗にすると工事費用が多大になるので、
所有者が想定するより、低い時価評価になることが多いです。
ご自分でも調べることはできますので、
上水道配管図、ハザードマップ、
それから下水道地域でなければ浄化槽の排水先があるかどうか、
境界杭はあるか。
少し怪しいな、と思った方は、一度調査してみるといいかもしれませんね。