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空家の譲渡所得3,000万円控除

相続不動産売却

不動産を売却すると、税金がかかります。

正確に言えば不動産売却で"儲け"が出ると、税金が発生します。


たとえば土地を2,000万円で売却すると所得税約15%、住民税が5%かかります。
所得税は確定申告時に納付書にて納付、住民税は翌年の住民税にて徴収されます。


※復興特別所得税は割愛



少し具体例にしてみましょう。

昔から一族が持っている土地を相続で取得して、10年くらいたったとします。

草刈りも面倒だし、子供も使う予定ないし、ということで売却したい。

仮に2,000万円で売買できたとします。

儲けはいくらか?


もうけ=売却価格-取得費と売却にかかった経費


所得税はもうけ、つまり"利益"に課税されます。
売った金額にそのまま税金がかかるわけではありません。


今回は相続で取得した土地で、昔に買ったわけでもない。
"取得費"はありませんから、0円です。



しかし、大昔に買って、いまは買った金額がわかる書類が無い。
購入したのに、購入した金額を一切経費にできないのはかわいそうです。

そこで、最低限、一定額は取得費として計上してもいいことになっています。
これを概算取得費といいます。


概算取得費=売買価額×5%


最低でも、2,000万円のうち100万円は取得費に計上できるわけです。


他に経費として、測量代、解体費用、仲介手数料などが計上できます。
そうすると、


 売買価格  2,000万円
-概算取得費  100万円
-測量代     50万円
-仲介手数料   70万円

課税譲渡所得1,780万円


これがいわゆる”もうけ”。
税法的には"課税譲渡所得"と呼びますが、これに税率をかけます。


所得税15%⇒267万円
住民税 5%⇒89万円


合計税額 356万円


ということで、

2,000万円で売ったら356万円も税金で取られてしまいます。


昔に2,000万円で買っていたことが契約書類などで証明できるなら、


 売買価格  2,000万円
-取得費   2,000万円
-測量代     50万円
-仲介手数料   70万円

課税譲渡所得  0万円


となり、税金は発生しません。

0万円に何を掛けても0万円です。
“もうけ”が存在しないですからね。


取得費の有無によって税金356万円の差が出る、
ということは売主にとっては重要なことです。


たとえば不動産業者に一括査定を依頼すると、


営業A ”~~~万円で売れます”
営業B ”うちならもっと高い金額で売って見せます!”
営業C "いいや、もっと高い金額でちょうどお客様がいます!やらせてください!”


架空のお客様をでっちあげてみたりして。


それはそれで好きにしてくれればいいのですが、
売主にとって大切なのは”結局いくら手元に残るのか”なので、


2,000万円で売れたけど税金を356万円支払った


というより


1,900万円でしか売れなかったけど、税金は0円だった


という方が嬉しいわけです。



ところで、相続でも贈与でも取得費は承継されます。


売った土地建物の中には相続や贈与により取得したものもあります。この場合の取得費は、被相続人や贈与者がその土地建物を買い入れたときの購入代金や購入手数料などを基に計算します。

//www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm


ですから、親が買った古い売買契約書とか領収書はとても大切。
とにかく不動産関係の書類は捨てないで取っておいて欲しいのです。



さて、話が長くなりましたが、やっと本題。
”空き家の3,000万円控除”のお話です。

要するに、一定の要件を満たせば経費に3,000万円を計上できる、

というような制度です。


似た制度として、有名な”居住用3,000万円控除”があります。

直近まで住んでいた家を売却する場合、3,000万円を経費にできる制度です。

先程の計算で言えば、


 売買価格  2,000万円
-概算取得費  100万円
-測量代     50万円
-仲介手数料   70万円

-特別控除  3,000万円
=課税譲渡所得   0万円


となります。3,000万円分を控除できるのは大きいですね。
当然、税金は0円となります。


一方、”空家の3,000万円控除”というのは
相続した空家について使える特例です。


空き家となった被相続人のお住まいを相続した相続人が、耐震リフォーム又
は取壊しをした後にその家屋又は敷地を譲渡した場合には、その譲渡にかか
る譲渡所得の金額から3,000万円を特別控除します。


//www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm



親が住んでいた戸建を子が相続して売却する、というのが典型的です。

要件は大きく分けて4つ。
大前提として、


【1】相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。


とあるので、昔の相続では使えません。


【2】売却代金が1億円以下であること。


これは東松山だとあまり関係ないかもしれませんね。


次に物件の要件として


【3】物件について

①昭和56年5月31日以前に建築されたこと
②マンションでないこと
③相続開始前に、被相続人以外が住んでいないこと


という要件があります。


戸建のまま売りたい場合は

耐震適合性を満たすためにリフォームする必要があります。

家が使えないようでしたら、解体して売却すればいいです。
ほぼ皆さん解体して売却します。


全体的な流れは、


【販売開始】→【購入者が決まって契約】→【建物解体】→【引渡し】


という形になります。



最後に
被相続人の要件が2パターン。


【4】被相続人(亡くなった方)について

①直近まで被相続人が対象物件に住んでいたこと。
②要介護認定を受けて老人ホームに入っており、かつ戸建を自分で使っていて、貸したり他の人に住ませたりしていないこと


これ、言うのは簡単ですが、それなりに手続きが必要です。


特に老人ホームの方は少し厄介です。要介護認定を受けているのが大前提。
また、戸建が長い間空いているからといって、
子供に住んでもらっている場合はアウトです。



これら4つの要件ですが、

税務署がいちいちチェックするのも大変です。そこで、

「要件満たしてるよ」「被相続人が住んでたんだよ」「他の誰も使ってないよ」

というのをチェックするのは市町村の役割になっています。


市町村に申請してチェックしてもらったら、
市町村から被相続人居住用家屋等確認書を発行してもらいます。


市役所に申請する際の添付書類がこちら。




沢山ありますね。

住民票・戸籍は相続の時に取っているでしょう。
登記簿関係は、売却を依頼する不動産業者に取ってもらうといいです。

老人ホームに入ってから亡くなった方の場合は

書類が煩雑なケースもあります。


実際、よくよく読んでみれば難しいことも無いのですが、

ぱっと見ても何がなんだかわからないでしょうね。



従前、建物の解体時期を誤って控除が適用できない事例が多く、

けっこう実務上でも問題になりました。

今年の改正からは使いやすく、

「譲渡してから翌年の申告前までに建物解体しておけばOK」

という取り扱いになり、業者買取でも活用しやすくなっています。


確定申告自体は難しくないのですが、

忙しい方は、市町村に確認書を発行してもらうのに苦労すると思います。

販売図面の手配や写真撮影・謄本収集、

解体の手配との兼ね合いもあります。年末の売買になるとバタバタです。

そのため、空家控除の適用については

最初から不動産業者に協力してもらったほうがいいです。



制定当初よりは使いやすくなった本特例ですが、

市町村によって取り扱いが異なったり、

居住部分と非居住部分が異なったりすると、途端に厄介になります。


居住用3,000万円控除もそうですが、
簡単そうにみえて否認事例が多いのが、この手の控除です。

居住用3,000万円控除だけで税理士が何冊も本を出しています。

税理士にスポットで確定申告をお願いして、

空家控除や居住用特別控除を適用してもらうと、

それだけで別途10~20万円くらい加算される税理士もいます。

手間もかかるし、リスクもあるからです。



とにかく、この手の控除が簡単ではないことは知っておいてください。

特に居住用特別控除は、不動産業者が使えますよーと軽く答えて、

けっきょく適用できずトラブルになるのは、よく耳にします。

3,000万円控除、ということは節税額は最大600万円。

つまり、トラブルになるときは最大600万円の損害賠償請求です。

お気をつけくださいね。


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