相続が発生した時の不動産について
生きていれば歳を取るもので、
歳を取れば、人はいずれ亡くなります。
不動産を売却する理由の多くは、
相続によって不要となった土地や戸建を売却するものです。
例えば親が亡くなった時。
医者にかかっていれば、連絡して死亡診断書を書いてもらいます。
そうでない場合は警察に連絡して、死亡検案書を出してもらいます。
その後、葬儀社に連絡して遺体の搬送を行い、
死亡届・火葬許可証⇒通夜・葬儀・その他諸々、沢山の手続きを行い、
嵐のような2週間が終わって、葬儀社への支払も終わったところで、
さて相続をどうしたらよいのか、という話になります。
まず相続税が発生するかどうか。
相続財産額が3,000万円+相続人の数×600万円以内であれば、
相続税は発生せず、相続税の申告も不要です。
ただし、相続税が発生しないといっても、
亡くなった方の準確定申告は必要です。
賃貸物件のオーナーであったり、直前までお仕事をされていた方は、
確定申告が必要になるわけです。
相続は「遺言があるか無いか」で大きく変わります。
有効な遺言があれば、その通りの相続を実現していくことになり、
そうでなければ、相続人の話し合いで分割内容を決めていきます。
※相続人全員が合意して、遺言に反する内容を実現することも可能です
さて、相続財産の金額を判定する際に困るのが、非上場株式と不動産です。
現金ならシンプルです。
普通口座に1,000万円入っていれば、それは1,000万円です。当たり前ですね。
有価証券であれば、直近3ヶ月の平均額を見て決めます。
投資信託であれば解約返戻金相当。
会社の経営に関与されている方で、非上場株式があると大変です。
非上場株式の相続税評価を計算する必要があります。
もうひとつは不動産。
こちらも「一体いくらなのか?」が判断しづらいです。
土地の評価は、相続税路線価に土地の形状毎の補正を行い、
地積をかけて算出します。
計算方法自体は、加減乗除なので簡単です。
建物の評価は、自宅なら固定資産税評価額。
賃貸物件なら、借地権割合やら借家権割合やら、
賃貸割合やらを掛け合わせます。
このあたり、計算が幾つかあり難しいこともありますから、
相続税申告が必要になるかどうか、
きわどい場合は税理士に申告書作成をお願いすることになります。
以上は、あくまで「相続税を納税する時にする計算」の話。
「本当はいくら?」というのは別のお話です。
たとえば相続税が発生しない方で、
話し合いで不動産の引継ぎ先を決める場合。
具体例をあげましょう。
「長男が現金で1,000万円、次男は実家を相続」になったとします。
本人たちは「この相続は平等なのか?」というのが不安です。
実家は使わないので売る、と考えたとして、
本当に1,000万円相当かどうかは別の話です。
そもそも、実家の建物が古くて、売る場合は更地にしないといけない場合、
仮に1,000万円で売れたとしても、
売却金額 1,000万円
解体費用 -100万円
荷物撤去 -30万円
測量費用 -30万円(東松山価格)
仲介手数料 -40万円
譲渡所得税 -160万円
∴最終手残り 640万円
こうなってしまえば、
1,000万円と640万円で兄弟の手取りが違ってしまいますから、
まったく平等ではないわけです。
相続人同士、わかった上でやるならいいのですが、
力関係の強い長男に言いくるめられてこうなった日には、
後の不仲の原因にもなります。
実務的に、「売ることが確定している不動産」であれば、
兄弟共有で相続して、お互いに協力して不動産会社に預け、
手残りの金額を2等分、という風にした方が安全です。
名義上はどちらか片方にしておいて、
売却した手残りを等分する方法も取れます。
ただし、遺産分割協議書の作り方を工夫する必要がありますので、
きちんと確認して行った方がいいです。
片方の名義にして売却したのだけれど、
遺産分割協議書の作り方が悪く、
等分したお金を贈与とみなして課税される場合があります。
遺産分割実務では、よくある論点です。
司法書士が作成した分割協議書だと、
贈与税の発生を失念していることがありますのでご注意ください。
大きな土地があって、
それを兄弟で2つに分けてそれぞれが所有する場合なども注意が必要です。
何も考えず、相続人の要望に沿って分割してしまった後、
いろいろ問題に発展することがあります。たとえば
・片方の土地に、必要な規模の建物が建たない
・土地をまたがって地下の管が流れていて、
上下水道管・ガス管が連合管になってしまう
・形状、規模、接道、方角の違いなどから、土地の時価に差が出てしまう
このあたり、相続人の力関係だったり、
士業の誘導のままに決めてしまうことが多いのですが、
決めた後にトラブルに発展することがありますのでご注意下さい。
ちょっと危ういと思ったらご相談頂いた方が安全です。
手間賃くらいは頂戴するかもしれませんが、
後のトラブル回避と思えば安いです。